本当は背景部分を先に書いた方がいいんですが、多分ここを知りたい人が多いと思うので、推奨事項部分から翻訳しておきます。翻訳中には入れていませんが、参考文献の数字が入ってます。(それぞれの推奨事項にはもっと詳しい解説が書かれているのですが、こちらの翻訳はかなり手こずるのでとりあえず概要部分だけ翻訳していきます。)
翻訳
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推奨事項⑥
栄養補助食品と強化食品
栄養強化されていない食品だけでは栄養所要量を満たすことができない場合、生後6~23ヵ月の子どもは、栄養補助食品または栄養強化食品が有効です。
a. 複数の微量栄養素粉末(MNP)は、食事中の他の食品を置き換えることなく、選択されたビタミンおよびミネラルの追加量を提供することができます(状況特異的、中程度の確実性のエビデンス)。
b. 市販の穀物ベースの補完食品や混合粉をすでに摂取している集団の場合、これらの穀物の強化は、微量栄養素の摂取を改善することができますが、摂取を推奨すべきではありません(状況特異的、中程度の確実性のエビデンス)。
c. 少量の脂質ベースの栄養補助食品(SQ-LNS)は、著しい栄養欠乏に直面している食糧不安集団に有用である可能性があります(状況特異的、確実性の高い証拠)。
備考
-微量栄養素の補給に関するWHOガイドラインは、そのような補給が推奨される場合の状況についての勧告を提供しています。
-3つの製品はいずれも単独の介入として配布されるべきではなく、乳幼児の最適な食事習慣を強化するためのメッセージングや補完的支援を常に伴う必要があります。
-どの製品も、健康的で加工度の低い食品からなる多様な食事の代わりにはなりません
-GDGは、強化ミルクに関する推奨を行わないことを決定しました。
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解説
ここに関しては、日本ではあまり関係がない部分が多いです。いや、関係あるんですけれども、ここで検討されている栄養補助食品や強化食品は、基本的に低所得国の食糧支援などで使われているものなんですよね。ですので、今回は関係ありそうな部分だけをピックアップしたいと思いま……したが、うーむ、流石にちょっと栄養の状況が違いすぎて日本の状況にあてはまらないと思われるんですね……。強化穀物は欧米で市販されているライスシリアルではなく、食糧支援に使われているSuper cereal plus(小麦や大豆に砂糖、脱脂粉乳、植物油、それにビタミンミネラルなどを添加した乳幼児向けの食品)を想定しているようです。
世界にはいろいろな国がありますので、補完食として主食がメインにならざるを得ない国もあります。そういった国ではいろいろな栄養補助食品などが食糧支援として利用されています。MNP、強化穀物、SQ-LNS、強化ミルクはそういった国々での栄養状態の不足を改善していることは間違いありません。ただ、備考部分に書かれている通り、「健康的で、加工度の低い多様な食事の代わりにはならない」ということになります(栄養補助食品や強化食品だけでは補いきれないものがある)
ここからは私の個人的な見解です。
日本ではいろいろな「健康的で加工度の低い多様な食事」を準備できますが、いろいろな赤ちゃんがいますので、あまり食べてくれなかったり、食べるものが偏ったりということが起こり得ます。足りない栄養については栄養を強化した食品を使う意味があるだろうと私は考えています。ただ、他の推奨事項でも書かれていたかと思いますが、やはり「栄養強化してるから、あとは好きなものだけ食べさせればいいや」というものではなく、あくまでも多様な食事を基本として、そこに栄養を強化した食品をプラスする、という考えで使用していただくのがよいかなと思います。
特に鉄に関しては、本当に「健康で加工度の低い多様な食事」を使ってなおギャップを満たすことは難しいので、上手に鉄を強化したベビーフードなどを使っていただくといいのではないでしょうか。
出典
https://www.who.int/publications/i/item/9789240081864
https://iris.who.int/handle/10665/373338
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