WHOの新しい補完食ガイドライン 推奨事項⑦レスポンシブフィーディング 翻訳と解説

 本当は背景部分を先に書いた方がいいんですが、多分ここを知りたい人が多いと思うので、推奨事項部分から翻訳しておきます。翻訳中には入れていませんが、参考文献の数字が入ってます。(それぞれの推奨事項にはもっと詳しい解説が書かれているのですが、こちらの翻訳はかなり手こずるのでとりあえず概要部分だけ翻訳していきます。)


翻訳

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推奨事項⑦

レスポンシブフィーディング


生後6~23ヵ月の子どもは、レスポンシブフィーディング(「子どもが自律的に、生理的および発達上のニーズに応じて食べることを促すような摂食習慣のことで、食事の自己調節を促し、認知的・情緒的・社会的発達をサポートする可能性がある」と定義されます)を行うべきです(strong, low certainty evidence)。


備考

-レスポンシブフィーディングの介入を実施するには、医療従事者やその他の介入を担当する者が、養育者や家族に必要な指導を提供する能力を持つことが必要です。

-この勧告の実施には、養育者が幼児が食事や自食(self-feefding)をしている間に立ち会う時間を持ち、自食中の食物損失が問題にならないようなリソースを持っている必要があります。

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解説

最後はレスポンシブフィーディングについての項目ですね。こちらについても以前のガイドラインに書かれていた部分で、元々推奨されていた内容ですが、もう少し詳しく書かれています。

今回、レスポンシブフィーディングの介入として調べられた研究は

C1. 空腹と満腹の認識

C2. 子どもの発達段階を考慮した補完食導入の準備

C3. 子どもの発達の必要性に応じた食感/一貫性

C4. 子供に食べることを強要せず、褒め、自力で食べることを奨励する

C5. 味の好みと特定の食品に繰り返し触れること。これには、健康的な食品/飲料に繰り返し触れながら多様な食事を提供し、超加工食品や砂糖入り飲料の提供を避けるよう養育者に促す介入も含まれる

C6. 健康的な食事の役割モデル

C7. 楽しく刺激的な家族の食事環境

C8.適切ななだめ方(保育者は、空腹でないときに子どもを落ち着かせるために食べ物を使わない)、睡眠、遊びの日課(保育者は、応答的育児/応答的摂食の介入の一環として、睡眠と遊びのための十分に構造化された日課を確立する)

 C9. C10 病中病後の摂食

となっていまして、一口にレスポンシブフィーディングのといってもかなり幅広い内容を想定しているようです。ざっくり言うなら、赤ちゃんの反応を見ながら適切な補完食を準備すること全般を指し(まあresponsive feedingなんですから言葉の通りなんですが)、赤ちゃんの反応を受け取って、どう対応するのがよいか、というなかなか一筋縄ではいかない話をこの項目で書かれている、ということになります。

補完食は「なにを」食べさせるか、だけじゃなくて「いつ、どこで、誰が、どのように」食べさせるかも重要です。レスポンシブフィーディングは、養育者が子どもの生理的・発達的欲求に応じて、自律的に食べるように促すアプローチであり、これにより食べることの自己調節が促進され、認知的、情緒的、社会的発達も支援され、最終的に子供が「空腹に反応して食物摂取量を自己調節できるようになる」のを目指すんですね。

ただ、上の研究の範囲を見る限り、自分の好きなものをだらだらと好きなだけ食え、という意味ではなくて、あくまでも健康的な食事、バランスの良い食事を適切に摂取していくことを、赤ちゃんの反応を見ながら支援する(でも無理強いはしない、あくまでも食事は楽しく!)というくらいの意味ととらえるとよいのではないかと思います。

じゃあ具体的にはどうしろっていうのか、そこを推奨事項の中に入れてくれよと思うんですが、現時点ではエビデンスが不十分なものもあり、その標準的なプロトコルの作成などにはさらなる研究が必要、ということのようです。

ひとまず、現時点で一般的に言われているところをまとめると

・空腹と満腹のサインを受け取って無理強いしない

・乳幼児には直接食事を与え、年長児が自分で食事(スプーンなどの食具を使う、もしくは手づかみ食べ)をするときは手助けをする。ゆっくり根気よく食べさせ、食べるように促すが、無理強いはしない

・子どもが多くの食べ物を拒否する場合は、食べ物の組み合わせ、味、食感、励ましの方法などをいろいろ試してみる(繰り返し提供することで、受け入れられる食材の幅や量が広がる可能性がある)

・子どもが食事に集中しやすくする(たとえば、スマホやテレビで気を散らさない)

・食事の時間は学習と愛情の時間であることを忘れないようにする

あたりかなと思います。


ちなみにAAPによる空腹のサインは

・食べ物に体を傾けて口をあける

・食べ物を見ると興奮する

・食べ物に焦点をあて、視線で追う

これに対して満腹のサインは

・食べ物を吐き出すか押し除ける

・そわそわしたり、気が散りやすい

・食べ物をあげようとすると口を閉じる

・食べ物から顔を背ける

・食べ物で遊ぶ

としていますので、よければ参考に(という話を「赤ちゃんのための補完食入門」に書くつもりでしたが、ページとバランス等の問題で省略したので、ここで披露)

出典

https://www.who.int/publications/i/item/9789240081864

https://iris.who.int/handle/10665/373338



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