WHOの新しい補完食ガイドライン 推奨事項①母乳育児の継続 翻訳と解説

本当は背景部分を先に書いた方がいいんですが、多分ここを知りたい人が多いと思うので、推奨事項部分から翻訳しておきます。翻訳中には入れていませんが、参考文献の数字が入ってます。(それぞれの推奨事項にはもっと詳しい解説が書かれているのですが、こちらの翻訳はかなり手こずるのでとりあえず概要部分だけ翻訳していきます。一部は解説で触れています)


翻訳

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推奨事項①

母乳育児の継続

母乳育児は2歳まで、もしくはそれ以降も続けるべきです(強く、確実性の非常に低いエビデンス)(strong, very low certainty evidence)


備考

 この勧告を実行するためには、すべての母乳育児中の女性が、それを可能にする環境と支援サービスを必要とします。

例えば

・ 家庭外で働く女性には、施設内の託児所、職場の授乳室、柔軟な勤務体系などのサービスが必要です。

・すべての女性は、母乳育児の際に生じる疑問や課題に対処するために、母乳育児カウンセリングサービスを利用する必要があります。

・妊婦、母親、家族、医療従事者は、母乳代用品の製造業者や販売業者による搾取的なマーケティングから保護される必要があります。

・医療提供者は、母乳育児の母親をエビデンスに基づいたケアで支援するための知識と技術を身につけなければなりません。

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解説

推奨事項①は、今回のガイドラインは補完食の話ではあるのですが、補完食がはじまっても母乳育児は続けてね(2歳まで、もしくはそれ以降も)という点について書かれています。母乳育児の方は参考にされてください。ミルク育児の方は推奨事項②を参考にされてください。

ただ、実際には母乳育児には困難が生じることもWHOはわかってますので、実際にそれを行うには、環境整備やさまざまなサービスが必要だし、母乳代替品(粉ミルクや液体ミルク)の不適切なマーケティングはよくないし、医療従事者はちゃんとエビデンスに基づいた知識と技術で母乳育児を支援してね、ということも書かれています。

これらは盲目的に勧めているわけではなくて、今回改めていろいろな面で比較検討されています。例えば病気の時に食事の摂取量が落ちても母乳から得られるエネルギー量は影響を受けなかった、とかは、補完食で食事を食べられるようになった以降でも母乳のメリットを感じる瞬間かもしれないなと思いました。(詳しい内容については出典をご覧ください)

またアメリカの小児科学会は生後1年までの母乳育児を推奨していましたが、現在は「お互いが望む限り」2年以上の母乳育児を継続することを支持していることにも触れられていました。推奨が変わっていますのでご確認ください。

ただ、エビデンスの質としては全体に非常に低い、という部分は気になるところで(その点もちゃんと記載されてるのは素晴らしいですね)、それを思うと「2歳まで続けられない」場合もそこまで悩む必要はないよ、とも思うところです。

2歳までの母乳育児と、それ以降も継続してもいいんだよ、ということは以前からWHOが言っていたことですので、ここの部分に大きな変更はありません。で、これは低所得の国だけでなく、中所得、高所得の国も対象になりますので、日本も同じ、ということになります。

日本では、昔は離乳食を開始したら母乳を粉ミルクに置き換えていくとか、授乳回数を減らす指導がされていたので、祖父母世代の方には「1歳には母乳はやめないと」というような感覚が比較的根強く残っているかもしれません。今はそれらの指導はされていません(厚労省の授乳・離乳の支援ガイドにも書かれていません)ので、過去に育児をされた方、育児の支援をされていた方は、授乳については温かく見守っていただけますと幸いです。




出典

https://www.who.int/publications/i/item/9789240081864

https://iris.who.int/handle/10665/373338

AAP
https://publications.aap.org/pediatrics/article/150/1/e2022057988/188347/Policy-Statement-Breastfeeding-and-the-Use-of?autologincheck=redirected&_ga=2.246748225.475219965.1678111591-2141458466.1642601031

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